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彼については「アーク」の略称で呼ばせていただく。 彼には英語の素晴らしさについて多くを教えていただいた。誰もが 彼の人柄を敬愛し、彼の授業を寝てすごしたものはなかったといわれる。「smell」を 「サケクサイ」と訳した外国人英語教師は、有史以来彼が初めてではなかろうか。 アークは温和でありながら厳しさを内に秘めた人であった。特に遅刻者には 容赦しなかった。彼は教室に入ってくるとまず出席をとる。しばらくして遅刻者がいそいそと現れ、 遅刻の旨をアークに告げようとすると、彼はその人物をちらっと見て一言。 「オーケイ」 それで終わりである。何がオーケイなのかはさっぱりわからない。遅刻者は煙に 巻かれるのだが、オーケイだからといって遅刻が取り消されるわけではない。 さらにアーク自身が遅刻した場合。やはり彼はさっそうと教室に入ってきて、 とりあえず生徒たちをさらっと見回して一言。 「オーライ」 これまたさっぱりわからない。ほかに弁解も何もなし。まさに愛すべき者の典型と 言えよう。 ・戻る |