昨今、妙齢の未成年女性を指してやたらと「美少女」という言葉が使われている。「美少女コンテスト」「美少女グラビア」に始まり「美少女女子高生の素顔」「またまた!?美少女ストーカーに遭う!」さらには「犯人はスレンダー美少女!」などと
どう考えても方向性を間違っている記事・見出しが電車の吊り広告一面に踊り狂う始末。これがマンガやアニメになるとさらに激しさを増し、右を見ても左を見ても美少女美少女、美少女だらけである。
では「美少女」とはなんだろうか。本稿ではマンガ・アニメといった2次元世界における美少女像を検証し、21世紀最高の美少女を白いキャンバスに描きあげてみたいと思う。
まずは顔の輪郭から参ろう。
平安時代はいわゆる「丸ぽちゃ」顔が美女の条件だったそうだが、現代日本においては2次元、3次元に関係なく「卵型」の顔立ちが美女あるいは美少女の条件であるらしい。タマゴは栄養バランスにすぐれているそうだ。朝は目玉焼きで決まりである。
そんな健康的なタマゴであれば、顔かたちに関してもタマゴにせざるを得まい。実際どの少女マンガを見ても卵型以外は存在しない。よって顔の輪郭は卵型に決定である。まずはキャンバスに輪郭だけ書いてみよう。
…よし。
どことなく美少女らしくなってきた。
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キャラの目の中に星を描くようになったのはマンガの神様・手塚治氏からだそうだ。ではあんなに目をデカく描くようになったのは誰のしわざだろう。
よく知られているように、少女マンガ、または少年マンガに出てくる美少女はたいてい目がデカい。どれくらいデカいかというと、両目の面積の和が顔の面積の1/4から半分ほどを占めるほどデカい。キャラによっては
眉毛が眼球上部に深々とかかっているという痛そうな目をしている。本人は痛がるそぶりも見せないが、おそらくやせ我慢である。
それだけならまだしも、黒目の部分がこれまたやたらとデカい。「黒目がち」という言葉があるがそんなカワイイものではない。なにしろ
白目の部分は探さないと見つからないのだ。
美少女はしょせん美少女である。表面的に美しければそれでいい。それでいいのだがつい想像してしまう。
あの巨大な目の裏にはおそろしく発達した視神経が大都市の交通網のごとく、ハエナワ漁に使う網のごとくめぐらされているに違いないと。
よってハエナワ漁船の漁風景を想像しつつ、キャンバスに目を描きいれてみることにする。目の面積は顔の半分。黒目はその90%ほどを占め、さらに黒目に星を入れる。これが基本だ。
…よし。
完成の日は近い。
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2次元美少女をひたすらネットで検索しているうちにあることに気づいた。鼻が無性に小さいのだ。横を向くと形のよい鼻がちゃんとあることがわかるのだが、正面から見た時はオマケみたいに目立たず、点や線、小三角が下を向いたものなど手抜きとも思えるいい加減ぶりである。そればかりか場面によっては
鼻がないことすらある。鼻がないと口で呼吸をしなければならないのが道理であるから始終口を開けっ放しということになり、美少女としてはいささか見劣りするのではないかと心配である。場面場面で鼻のあるなしが変わるようだから、おそらく
鼻は適宜抜け落ちたり生えたりしているのだろう。
さらに気づいたことがある。口の大きさが場面によってまちまちなのだ。開いた場合、目を除いた顔の下部分を埋め尽くすほど豪快に開かれることもあり、逆に小指の爪ほどにもならないこともある。さらにその口を閉じるとただの線、点、ひどい時には
消失してしまう。鼻があれば呼吸はできるから、会話をする時さえ口があれば用は足りるのだが、この現象はなかなか興味深い。時には鼻も口もなくなってしまい、顔にあるのは目ばかりという
福笑い的な人相になることもあるから、もしかすると美少女ともなれば無呼吸でも生存できるのかもしれない。
これらの観察結果を元に、キャンバスに鼻と口を描き入れてみよう。鼻はなくてもいいがオマケ程度につけてみる。口はどうしよう。あまり大口にすると虫が飛んできた時困るから小さめにすることにする。
…よし。ところで
どこのマスコットキャラだろう。
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ここにきてハタと困ったことがある。髪型はどうすればいいのだろう。私が知っているのは丸刈り、虎刈り、モヒカン、アフロくらいだから
この中から選ぼうか。
いやまてまて、ここはまず調査によってどのような髪型が存在するのか調べてみるのが筋だろう。というわけで検索してみた結果、マンガイラスト付きの次のようなリストを発見した。
ロング、セミロング、ショートカット、ボブ、三つ編み、ポニーテール、ツインテール、メガネ
最後のメガネというのはよくわからない。誤って入れてしまったのだろうか。絵を見ても三つ編みにしか見えないのだが…。
ロングは肩より長い長髪で、セミロングは肩くらい、ショートカットはおそらく近道のことだろう。ボブはいわゆるおかっぱ頭のことらしい。三つ編みは綱を作る要領で髪を編んだもので、荷物を結わえるのにも使えそうだ。そして後ろで髪をまとめるのがポニーテール、左右でまとめるとツインテールとなる。
さて髪型を調べているうちに面白いことに気づいた。髪の色についてだが、黒髪、赤毛、金髪、銀髪という実在するもののほかに青毛、緑髪のキャラが多いことである。塗り色が綺麗だから染めたわけではなく地毛らしい。美少女とは人種を問わず「美少女」と認められるべき存在であるから、既存の枠にとらわれない色が使われるようになったのだと思われる。その割に肌の色はいわゆる肌色ばかりだが、さすがに青や緑の肌には違和感がありすぎるのだろう。
ではキャンパスに髪を描いてみよう。本来ならどの髪型がもっとも使われているのかを調べてみなければならないが、どう調べていいものやらわからない。そこで個人的な趣味から
ツインテールに決めた。なぜって
必殺技みたいな名前でかっこいいからである。必殺技であるからにはヒットしてもらわないと困る。色はせっかくなので青にしよう。
…
もはや何も言うまい。
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あとは色を塗れば終わりかと思ったが、よくよく眺めると何かが足りない。2つほど足りない。
まずは背景だ。少女マンガではどういうわけか
虹色のアワのようなものが背景にぷかぷか浮いていることが多い。意味もわからなければ何を表しているのかもわからないのだが、とりあえず必須事項らしいから描き加えてみよう。ただし虹色が作れないので緑で代用する。
さらに忘れてはならないものがある。それは小動物の存在だ。
美少女はたいてい
動物とも宇宙生物ともつかない珍妙な生き物をお供に従えている。仮にこれを小動物と呼ぼう。小動物の多くは特殊な能力を持っていて、魔法が使えたり、尋常ならざる動きを見せたり、自分が変身したり
美少女を変身させたりするらしい。人語を解するのもポイントだが、自分ではしゃべれないものも中にはいる。しゃべれなくて「ふぃー、ふぃー」などと鳴くのだが
なぜか美少女には意味が通じる。
小動物の多くは人間の言葉を自在に操るが、ただ操るだけでは不足なのかそれとも宇宙の方言なのか、たいてい語尾が怪しい。「そうだと言ってる
ケロ~」「そうなのだ
モグ~」などと奇妙な語尾をつけて喜んでいる。ときには著しく不自然に聞こえるが、美少女たちはわざわざ突っ込まない。きっと宇宙人との友好関係を円満にしておく秘訣なのだろう。
美少女を描く際にはこの小動物の存在を忘れてはならない。小動物にも型があって、基本的に「かわいい」ものでなければならない。おもな特徴は、丸い、毛がふかふか、大きくてつぶらな瞳、
実用的とは思えない小さな翼で宙を舞うなどがあるがここではこれ以上詳しく述べない。
とりあえず美少女の隣に小動物を配置してみよう。語尾は…美少女特集なのだから「びしょ」で決まりだ。
…小動物というより
妖怪けうけげんみたいだが、主役は美少女なのだから構わないだろう。あとはそれっぽく着色すれば完成だ。
少々物足りないので
エンボス加工を施してみる。
水彩画効果とかいうのを見つけたからついでに使ってみる。
…頼む。
そろそろ誰か止めてくれ。
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