12002年1月4日  (夕刊)
魔界タイムス


勇者軍 魔界に侵攻

「姫を返せ」 報復目当ての凶行か?


 四日午後二時すぎ、マ・ジナイ百貨店地下食品売り場の倉庫から突然「勇者軍」と名乗る人間二十名が現れ、従業員と客を次々に襲った。駆けつけた警官隊によって八名が逮捕されたが、十二名は繁華街に逃げ込み依然行方をくらませている。魔界警察庁は魔界全域に緊急避難警報を発令し、人間たちを見たら逃げるよう呼びかけるとともに、呪いをかけるなどして刺激しないよう警告している。(関連記事33面)

 魔界警察庁の発表によると、四日午後二時十分頃、マ・ジナイ百貨店地下食品売り場の食肉店倉庫から武装した人間二十人が現れ、「われわれは勇者軍だ」と名乗りながら、手にした刃物で従業員と客を次々に切りつけた。警備員が棍棒で応戦したが、勇者たちは「そんな安い武器で何ができる」などと笑いながら警備員に襲いかかり、全員に腹部を切るなどの重傷を負わせた。その後、従業員の通報により駆けつけた警官隊ともみあいになり、八名が傷害罪で現行犯逮捕されたが、十二名は警官らの包囲網を突破して建物の外に逃亡、正月明けでにぎわう繁華街にばらばらに逃げ込み、依然として行方がわからないという。警察庁は全力をあげて人間たちの捜索に当たっている。
 この事件で百貨店従業員、ボーン・ザ・アクマン氏(5111)が腹部を三箇所切られ全治二ヶ月の重傷を負ったほか、九名が全治二週間から一ヶ月のけがを負い、ファントム総合病院に収容された。また買い物客七名が腕を切られるなど軽いけが、警察官二名が顔を刺されるなどの軽傷を負った。さらに二次的な被害として、買い物に来ていたドグマダービーの人気馬、スレイプニル・ダダが逃げようとする人波に押し倒されて第六脚を折る重傷、他にも被害報告が相次いでおり、被害は今後も拡大すると予想される。なおスレイプニル・ダダの来週行われる新春レース・マグマ杯への参加は絶望的と見られている。
 逮捕された八人の人間たちは「姫を返せ」「さもないと魔界を滅ぼす」「魔王を殺るのはおれだ」「エンディングに顔をのせろ」などと興奮気味に不可解な発言を繰り返しており、警察庁は二ヶ月前に魔界移民局に保護された人間の少女が「姫」に該当するのではないかとみて調べを進めている。少女は強制送還後も魔界への侵入を繰り返し、現在は再び移民局の保護を受けている。人間たちは「少女が魔界に連れ去られた」と誤解し、報復目当てに凶行に及んだのではないかと警察庁ではみている。
 逃亡を続けている人間たちについて、警察庁は「見かけたらすぐ逃げること。身の安全を確保してから警察に連絡を」と注意を呼びかける一方、呪いをかけたり火を吐きかけたりして刺激することのないよう警告している。


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