12002年1月8日  (夕刊)
魔界タイムス


勇者軍 魔界各地に進撃

侵略戦争のきざし 国防魔軍出動


 「勇者軍」を名乗る人間たちのグループが魔界各地に進撃を始めたことを受けて、魔王デルモン一世は国防魔軍の出動を国防省に正式に依頼した。国防長官ワイ・バーン氏は人間たちによる侵略戦争のきざしもあるとしてこの依頼を受理し、今日の正午をもって国防魔軍八軍を各地に派遣した。国防魔軍による事態の鎮圧が望まれる一方、有識者の間では人間界との全面戦争を危惧する声も出始めている。(関連記事31面)

 魔界に侵入した人間たちはここ数日で総勢五百人ほどに増え、刀や杖などを手に勇者軍の各部隊に合流しつつ魔界中心部へ向けて進撃している。進撃ルートはおもにダークリバー・サイドに沿うものとデッドロック山脈を迂回するものとの二つで、すでに十九の区が人間たちの占領下に置かれている。勇者軍は太陽の紋章が描かれた巨大な旗を掲げ、「魔族は敵だ」「強くなりたい」「クラスチェンジはまだできないのか」などとわけのわからないことを叫びながら区民を無差別に攻撃している。すでに四百人以上のけが人が出ているものの軽傷がほとんどで、今のところ死者は出ていない。
 勇者軍の中には地図と見られる本を手にしている者が少なくなく、「この道でいいはずだ」「ここで経験値稼ぎをしろと書いてある」「あの森はレアなやつが出る」などと声高に話し合っているという。彼らの目的地は魔界中心部にある魔宮デーモンズパレスとみられている。
 勇者軍を食い止めるべく各地で警官隊や自警団が戦闘を続けているが、すでに大半が壊滅させられており、逆に勇者軍を勢いづかせる結果となっている。事態を重くみた魔王デルモン一世は国防魔軍の出動を国防省に依頼。国防長官ワイ・バーン氏は「勇者軍の目的が魔界中枢の混乱もしくは破壊にあることは明らか。すでに静観できる時期は過ぎた」として、今日の正午をもって国防魔軍八軍を各地に派遣した。国防魔軍の出動はじつに八百年ぶり。事態の鎮圧が望まれる一方で、国防魔軍の強大すぎる力を危ぶむ声や、人間界との全面戦争につながることを危惧する見方も有識者の間で広まりつつある。
 一方で魔界外務省は人間界に対し抗議声明を繰り返し発表しているが、人間界からは「勇者軍は正規の軍隊ではない。人間界からの侵略と受け取られては困る」と人間界ぐるみの侵略計画を否定している。


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人間グッズの店襲撃される(29面)
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