大貴族




高台の「大貴族」で昼飯を食ってきた。
注文したのはお勧めされていた「五目あんかけチャーハン」950円。なぜこれを注文したかって? うまそうだったからだ。他に理由がいるだろうか。

まずチャーハンだけ食ってみる。一口で分かる。これは美味いやつだ。
ただのチャーハン700円でも十分満足できそうだ。パラパラだが、パラパラすぎない。味は濃い目だが、濃すぎない。案外チャーハンというのは難しいものだが、ここのは俺の好みにジャスト・フィットだ。
で、「あん」だ。この日の最高気温は35度超。政府が「外出は控えろ」とわざわざ国民に通達するほどの酷暑だ。いくらお勧めでも、このアツい中あんかけというセレクトはなかったか。
…と注文直後から少々後悔していた事実は否定しない。しかし、一口食って後悔を忘れた。
ああ、これは美味いやつだ。もう手が止まらない。
写真のチャーハンのほぼ中央に縦に写ってるイカを見よ。なんというデカい切り身を入れてくるのか。

これはあれだ、普段使いにしたくなる町中華の典型だ。
他のメニューもぜひ試してみたいところだ。隣のテーブルの男が食っていた角煮定食も美味そうだった。大きい角煮がゴロッゴロ入っていたその様は、俺に海辺のテトラポットを思わせた。打ち砕かれるのは波濤ならぬ、俺の肉への欲求か。

店の親父も女将も給仕の女も、下町の町中華という表現をそのまま当てはめたような愛想の良さと柔らかさだった。
余談だが、親父が俺のチャーハンを持ってきたとき、「おにいちゃん? チャーハン?」と確認したが、俺はおにい「ちゃん」などと呼ばれる歳ではない。もう初老と呼んで差し支えない歳だ。おにい「さん」ならまあ、客相手の呼び方かとも思えるが。
やはりあれか。12浪しましたみたいな不景気な顔と飾り気も素っ気もないTシャツ姿で、呑気に司馬遼太郎など読んで飯を待っていたから、辛気臭い学生にでも見えたのだろうか。

次はやはり角煮だろうか…辛味噌ラーメンとかも美味そうだ。
最近、この界隈に美味い店が多いことに気づき始めた。リピしたい店が増えすぎて、寿命が足りない。なんという幸せな悩みだろうか。
今後も倦まずたゆまずこの世界に生まれ続けるであろう、食を愛する者たちのために、俺は食レポを書き残すことに決めた。

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