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こちらで紹介されていた、日村『まちノ食堂』でチキン南蛮定食を食った。 日村の街に隠然たる支配を及ぼす魔の学園、KO。上空から見るとその力は、駅の西側へと広がる放射状の痕跡により歴然であるという。 その蜘蛛の巣にも似た地形に絡め取られたような場所に、その店はあった。 店に入ったとたん、違和感が俺を襲う。まるでカフェのようなオシャレな内観と、店員のお仕着せ。「食堂」という店名とのギャップに戸惑う。 しかしメニュー表に並ぶ名前は店名のイメージ通りだ。ひとまず一番上にあるチキン南蛮定食1180円を注文してみる。 待つことしばし。店の男が俺の前にプレートを斜めに置く。斜め。これは男がズボラなのではなく、おそらくオシャレの一環だろう。俺は鷹揚にうなずき、配置に誘われるように、まず肉団子に手をつける。 うまっ。なんだこれ。ただの添え物じゃないぞ。ああ、あんかけの優しさが心に染みる……。 この小皿を掴んであんを舐め尽くしたい、そんな衝動に駆られる。しかしこんなオシャレな店でそれはできない。下手をすればドレスコードならぬ皿舐めコードに引っかかり、屈強な男たちが現れて店から放り出されかねない。 そこでバレないよう、小皿にうっかりご飯を落としてしまった風を装い、あんを飯に絡める。絡めて食う。そっと辺りを窺う。屈強な男たちは現れない。落とす。食う。うまい。 続いて主役のチキン南蛮だ。これがまた……美味い。ああ美味い。どうなっているのだ、チキン南蛮までがオシャレな味とは。 味噌汁をすする頃には、この店のコンセプトが明白になっていた。出汁だ。 肉団子のあん。チキンの衣。味噌汁。そして煮卵。 出汁が味を格調高く豊かなものにし、統一感も与えている。 体にいいものを食うとすぐに分かる。体が喜ぶのだ。一つ一つの細胞が生の歓喜を高らかに歌い上げ、もっと、もっとと騒ぎ立てる。 ああ、しかし、チキンは4つしかないのだ。 いいものを食べた。 昼飯、しかもこの価格でこれほどの満足感が得られようとは。 常連化したい店がまた一つできてしまった。 満ち足りた気持ちに心が弾む。 よし、予定にないがこれからルメルシエに行こう。最高の昼食に、最高のおやつを添えて、今日という日をさらなる幸福感で彩るのだ。 俺は意気揚々とルメルシエへ向かった。 「本日臨時休業」 ルメルシエェェェッ! きさまぁぁぁっ! ・メニューへ |