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好きな人に、好きって言える幸せ。 昔好きだった人が言ってたの。掴みが大事だ、意味不明なことでもいいからガツンと言っておけって。掴みどころか、出会った後もずっと意味不明な人だったけど。 そんなわけで、これは私が、言卯名のケーキ屋さん『サマヨエド・アンティーク』のケーキを試したお話。 まずはケーキの大会で優勝したという、店名を冠した「アンティーク」、864円。 きっとチーフパティシエはアンティーク家具が好きなのね。このネーミングの仕方、昔好きだった彼を思い出すわ。私がポテト好きだと聞いて、私にポテ子とあだ名をつけた彼。 そう、私はポテ子。芋をかじる女。 上品な甘さに香るカラメルと、ナッツの風味。なるほど、名前の由来は見た目だけじゃないのね。この味の色彩は、過去を思わせるセピア。派手さはないけど、懐かしさを覚える味。昔確かにあった、そんな静かな存在感……そう、まるで綱島に昔確かにあった、あのイトーヨーカドーのように。 時計のデザインもおしゃれね。止まったままの時計。あの人、告白した私に言ったわ、少し時間が欲しいって。だから私は待ってるの。あれからもう3年経つのね……。あの人、あのあとすぐLINEの名前を「メンバーがいません」っておかしな名前に変えてた。お茶目な人よね。 次は「モンブランナチュール」、935円。 こちらも甘さは控えめ。口の中で淡雪のように溶けるマロンムース、その中に隠れた栗のしっとりとした食感。軽やかな余韻を残すモンブランなんてあるのね。私、こういうの好きよ。 その優しさは昔好きだった彼を思い出させるわ。嫌なやつを犬呼ばわりする時は、ハプスブルクを前につけて「ハプスブルクの犬め!」と言えば知的な感じを出せるよ、と教えてくれた彼。 背が高くてね。綱島小学校の3本の糸杉を見るたびに、彼を思い出すの。一番大きい木が彼。一番小さい木が私。その間に割って入ったあの女。あの雌犬……ハプスブルクの雌犬が……! お店は超人気店。午前は14時まで、午後は15時から開いているけど、午前中にほとんど売り切れてしまうそうよ。行くなら11時の開店を狙うのがお勧めね。 仕事で行けない?それも一つの考え方よね。 でも私は違う。好きなもののためなら、仕事なんていくらでも犠牲にできる。それがポテ子、職をさまよう女。 ・メニューへ |