DYI



 
 

日村のアジア料理店「DYI」で昼飯を食った。

食ったはいいが、特にネタがない。
美味くてもネタがなければ食レポを書いてこなかったのだが、よく考えたらネタを書けと誰かに注文されたわけではない。
ならば普通に食レポしたっていい。したっていいじゃないか。
……冷静になれ、俺よ。まあいいさ、こんな夜があっても。

涼やかな店内。カフェというより気軽なバーのような内装。店員の装いも、立ち居振る舞いもクールだ。
注文したのはアジアンランチ、1600円。選べるメインに、サラダ、前菜。変わっているのは食前、食後と2つのドリンクが選べるところだ。
食前には今日の気分に合わせて、ローズヒップピーチティー。注文する時、ちょっと噛んだ。

サラダのドレッシングはコーン味ベース。これが美味い。これでサラダライスとかでも2杯はいけるだろう。
人類は、ただの草を最大限美味くする術を生み出したのだ…などというどうでもいい形容が、映画の冒頭のワンシーンのような音声で頭をよぎる。

前菜は生春巻きとエビトースト。ソースが3種類。
大きめのカップのソースにエビトーストをつけて食う。ピリリとした辛さが食欲をかき立てる。というかこのエビトースト、ソースなしで十分美味い。
まずい生春巻きというのを今まで食ったことがない。この美味なる食い物を発明した人間を今からでも探し出してノーベル賞とか、なんかそんな感じの賞を授与してもいいところだ。この店のも具がギッチリ詰まっていて満足度が高い。さっきのピリ辛ソースがクセになって、つけては食べ、食べてはつける。
ソースの中に何か見えた気がして、フォークですくってみると薄いエビだった。生春巻きからこぼれ落ちたのかとも思ったが、形がまるで違う。募る違和感。何気なくメニューに目をやり、俺は真実を知る。これソースじゃない、トムヤムクンスープだ。
俺は平静を装い、残ったスープをぐいと飲み干す。どんな勘違いも黙ってごまかせ。男なら。男に生まれたなら。

メインはガパオをチョイス。やや締まった味付け。俺にはもう少ししょうゆと砂糖を足したジャンキーな味付けの方が……いや待て、今日の俺はローズピップチーチティーを選んだ。今さらジャンキーを求めるな。男に生まれたなら、進む以外の道などない。

食後はアイスコーヒー。
……なぜだ。俺よなぜだ。なぜティーピチー相当のドリンクを食後にも選ばなかったのだ。
ああ、この子は駄目だ。スノッビーすぎてボロしか出せない。ポテ子、この子には無理だ。

この店はテーブル会計。おしゃれな雰囲気とマッチしている。しかしここだけの話、クレジットカードは使えない。そうメニューに書いてあった。
手持ちの現金がないように見えるか? 大きい札でしか払えないように見えるか? 小銭がないように見えるか? 違う違う違う違う。
俺はぴったり1600円を請求書にのせ、満足して店を出た。次に来る時はパッタイか? それもまたよし。


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