コンマWAR2




垂町「コマウォ」のチーズキムチチヂミを食った。

この店でのテイクアウトもこれで4度目だ。
初回のキンパ事件以来、俺は必ず事前に電話予約するようにしている。いや、予約なしで行ってまた欲しい料理がまったくなくて実質キンパ一択になっても、美味いからあまり気にならないのだが。

この店の料理はことごとく美味い。ただ美味いだけでなく、毎回俺の中の韓国料理観を揺さぶってくれる。
今回も大いに揺さぶられたのでレビューに至った次第だ。

まずは写真を見よ。さあ見よ!
……。
いかん、写真の腕がなさすぎた。

写真じゃ伝わらないので言葉で説明するが、こいつがデカい。とにかくデカい。うちにある最大の大皿、27cm皿を目一杯覆うデカさだ。レンジで温めるために皿に移したから間違いない。
加えて厚みがまたすごい。これ間違って2枚重ねて焼いたんじゃね? と動揺するほど厚い。
俺は40を過ぎてもカレーデーには飯を1合食うくらいには大喰らいだが、その俺をして食い切れるか危ぶんだほどのボリュームだ。
並の人間なら2人前、少食なら3人前はあるかもしれない。
にも関わらず1100円。コスパがまたとんでもない。

そして味だが、これまた一口食って天を仰いだほど美味い。
周囲はザクザク。上にはダブルチーズ。辛くないキムチがチーズとよく合う。そして厚みによる食べ応え。噛むたびに溢れ出る旨み。そいつが無限に食欲を満たしてやろうと言わんばかりに量の暴力で押し寄せてくる。
ちょっと待て。俺も長年生きてきてチヂミは何度も食っているが、チヂミってこんな美味かったか?こんな満足度の高い食い物だったか?しかもいつまで食ってもなくならない。美味い。ああ美味い。

俺は基本的にはネタがなければレビューしないのだが、食っているうちに書かずにはいられぬ気分にさせられた。
飯にレビューを書かされるという至福。

余談だが、俺は海外に行く際、その国の言葉を3つだけ憶えていくことにしている。
「ありがとう」、「こんにちは」、そして「美味しかったです」だ。
俺の旅は飯旅だから、このチョイスは妥当である。

韓国語で「美味しかったです」は「マシッソッソヨ」という。……少なくともGoogle先生はそう仰っている。
韓国旅行中は美味い店ばかりだったので、あちこちで食後店員に「マシッソッソヨ!」と声をかけたのだが、発音が悪過ぎたのかことごとく怪訝な顔をされた。何か得体の知れない意味に聞き間違えられた可能性も否定できない。唯一ビビンバ屋のおばあちゃんだけは笑顔を返してくれたが、あれは言葉が通じたというより、客向けの条件反射のような反応だった。

で、コマウォの店員も韓国人のようなので、2回目の来店時に懲りずに「こないだはキンパを食った。マシッソッソヨ」と言ってみたところ、即答で「ありがとー!」と返事が来た。

通じた……らしい。マジか。

ということは日本語的な発音でも十分いけるのか。あるいは店員の在日歴が長過ぎて、ジャパナイズされた韓国語を聞き取れるようになったのか。

ともあれ、通じるのなら利用しない手はない。
もし諸兄がこの店に二度以上行くことがあれば、ぜひ「マシッソッソヨ」と言ってみてほしい。参加人数が増えればどうなる? そう、「なぜこの店に来る日本人はマシッソッソヨだけ韓国語を知っているのか……?」と店員をSF(少し・不思議)ワールドに放り込むことができるのだ。あわよくば、異国の地で美味いものを作ってくれている者たちにささやかな感動を与えることもできるやもしれぬ。

時は来た。来たる2026年は皆で街に小さな奇跡を起こせ。さあ起こせ。


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