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「ああ、王子様、もう行かねばならないのです」 「なぜだ、シンデレーラ。まだ真夜中の鐘がなったばかりではないか」 「違うのです、王子様。12時の鐘が鳴ったら、わたしにかけられた魔法が解けてしまうのです。……さようなら!」 「待ってくれ、シンデレーラ!!」 王子の制止を振り切って、シンデレーラは長い階段を必死に駆け下りて行きました。振り向きもせず、うつむいたままで。 王子はしばし呆然としておりました。彼には何が起こったのかさっぱりわからなかったのです。シンデレーラの去っていった夜の闇はあまりに深く、彼はなすすべもなく立ち尽くしていました。 ふと気がつくと、階段の中ほどに靴が落ちているのが見えました。片一方だけの靴、ガラスの靴です。王子ははたと思い当たりました。 「あれは……そうだ、シンデレーラの靴だ。シンデレーラが落としていったに違いない。 あれがぴったり合う娘を探せば、シンデレーラを見つけ出せる」 王子は自分の考えに満足し、早速階段を下りて靴を拾い上げ、そこで思わず首を傾げました。彼はすぐに家来を呼び、その靴のサイズを測らせてみました。 家来は無言で三回測り直し、やがてぽつりと言いました。 「56センチです、王子」 「……」 「……」 「……」 終。
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