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「おばあさん、どうしてそんなに歯が鋭いの?」 「それはね赤ずきん、ものをよくかみ砕けるようにさ」 「おばあさん、どうしてそんなにお口が大きいの?」 「それはね赤ずきん…… おまえを食べるためさっ!」 叫ぶように言うと、おばあさんは……いえ、おばあさんに変装したオオカミは、 ベッドからむくりと起き上がり、赤ずきんに襲いかかりました。赤ずきんが何かを叫 ぼうとするまえに、オオカミは彼女をぺろりとたいらげてしまいました。 「へっへっへ。うまくいった。実にうまいごちそうだったな」 オオカミは満足げににやりと笑うと、歯をせせりながらベッドに腰掛け、くつろぎ 始めました。と、そのとき外から、枯れ葉を踏みつつこちらへやってくる小さな足音 が聞こえてきました。オオカミはあわてて布団をめくり、おばあさんキャップを深く かぶって『寝ている老婆』を装いました。 「おばあさん、おばあさん」 入ってきたのはどう見ても赤ずきんでした。オオカミは薄目を開けてそれを見て、 なんだか妙な気分になりました。しかしオオカミは物事を深く考えない性質なので、 これ幸いとばかりに再び少女に襲いかかりました。赤ずきんが何かを叫ぼうとするま えに、オオカミは彼女をぺろりとたいらげてしまいました。 「……うーん、今日はついているな。こんなごちそうを二度も味わえるとは」 オオカミはすっかり満足し、大きくなったお腹をさすりながら、ベッドに身をよこ たえました。するとそのとたん、ドアが開いて一人の少女が入ってきました。頭には 赤いずきんをかぶっています。 「おばあさん……」 ぺろり。 オオカミは条件反射で少女を食べてしまいました。すると間髪入れずにドアが開 き、赤ずきんが家に入ってきました。 「おばあさん……」 ぺろり。 するとどうでしょう。ドアから、窓から、煙突から、たくさんの赤ずきんがワラ ワラと入ってくるではありませんか。 「おばあさん」 「おばあさん」 「おばあさあん」 オオカミは何がなんだかわからなくなりましたが、こうなったら意地になるしかあ りません。片っ端から赤ずきんを丸呑みにしていきました。 「おばあさん」 ぺろり。 「おばあさん」 ぺろり。 「おばあさん」 ぺろり…… ……結局、オオカミは255人の赤ずきんを食べ、256人目をまえにしてばったり倒 れ、そのまま起き上がることはありませんでした。こうして、この勝負は赤ずきん チームの勝利に終わりました。 終。
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